
3. 障害? それとも、個性?
障害と健常(定型発達)との線引きは、非常に難しいものがあります。
たとえ発達障害の特徴があったとしても、さまざまな環境要因によって
ご本人の困り感は大きく異なってきます。
例えば、学校・職場・家庭などの環境で配慮があったり、
周囲に適切なサポーターがいたり、
その人が生活する社会や文化の許容量が寛容であれば、
障害ではなく個性として受け入れられる場合もあるでしょう。
逆に、わずかな支援さえあれば「個性の範囲」として受け入れられるのに、
支援が乏しい環境や、苦手なことが目立ってしまう環境に置かれたら、
障害とされてしまう場合もあるでしょう。
WHO(世界保健機構)による「国際障害分類(1980)」も
「国際生活機能分類(2001)」に変わって、
“障害は、個人の心身機能の特徴のみならず、社会的環境との相互関係である”
という考え方が重視されるようになりました。
このことからも、障害であるかどうかは環境によって大きく左右されるといえます。
発達障害の人の特徴は、裏を返せば利点になり得るものが多く、
ある分野では素晴らしい能力をもつ方もいらっしゃることが知られています。
アインシュタイン、エジソン、レオナルド・ダ・ビンチ、黒柳徹子、スピルバーグ、
ディズニー、トム・クルーズ、ビル・ゲイツ、坂本竜馬などの名前がよく挙がっていますので、
ご覧になったことがある方もいらっしゃるでしょう。
発達障害のすべての方がこのような才能をもっているとは言えませんが、
たとえ苦手な分野があっても、得意なことを生かせる環境に置かれたら、
障害ではなく個性として受け入れられて、
自分らしさを発揮できる例として参考になるのではないでしょうか。
大切なことは、発達障害であるかどうかではなく、
生きづらさから深刻なうつや不安に発展したり、
社会参加の機会が制限されるのを予防することです。
精神疾患による社会的損失の軽減という観点からも、
必要なサポートを受けやすい社会環境の整備が急がれます。